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    ―ビジネスパーソンのための「美術鑑賞」 はじめの一歩③―
JTC ブログ 2021.11.12

コミュニケーションのseeds
―ビジネスパーソンのための「美術鑑賞」 はじめの一歩③―

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皆さんこんにちは。日本翻訳センターのRです。

本日は、
ビジネスパーソンのための「美術鑑賞」 はじめの一歩第3回です。
*第1回目はこちら
*第2回目はこちら

③コミュニケーションのseedsが見つかる

美術鑑賞は「体験」。話題の幅が広がる!

写真と本物では迫力が違います。美術鑑賞は「体験」です。
コンサートや映画、使う筋肉は少々異なるかもしれませんが、
スポーツ体験とも同じと言えるでしょう。

ただそれも、興味を持ってこそのインプットアウトプットです。
関心の無いものを無理矢理見ても苦痛なだけなので、
そこは無理をしないですーっと通り過ぎてください。
その時々で「なんだろう?」「いいなあ」…etc.と感じるものを鑑賞しましょう。

好きな作品に「会いに行く」、おもしろいものを「発見しに行く」のが美術体験です。
ぜひ常識にとらわれず自由に好きなように接してください

自分が直に体験したものについては、語る言葉にも違いが出てきます。
やはり本やインターネット上の知識だけ、とは違います。
第2回ブログでも書きましたが、「見た」ということの他に、
何を感じたか」まで少し思いめぐらせるのがコツかもしれません。

「美術を語る」ということには、いくつもの段階があります。
美術に限らずあらゆることがそうでしょう。
知識の深さ、体験の多さ、費やしたエネルギー量(時間もお金も体力も)によって、違いますね。
気負う必要は全くなく、楽しみながら自分自身の「体験」として貯蓄していただければ、良いと思います。

その一方で、美術作品は作成された時代を反映しています。

例えば1492年ならば大航海時代、
2021年ならば今年を中心とした現代を多かれ少なかれ映し出します。
(あえて巧みに時代性を排除するなどの意図がある場合は別です)

政治、社会、経済、宗教…濃淡は有れど、
どこかにその時代の空気をはらんでいると考えて良いと思います。

とは言え、その作品の「捉え方」「感じ方」「鑑賞の仕方」に正解はありません。
自分なりの答えを探ってみる、疑問のまま残るものはあえてそのままにするなどしてください。
さらに言うなら、「答え」も無理に出さなくても良いですよね。

ただただアーティスティックな場に居ることが好きな人もいれば、
作品を深堀りすることが好きな人もいる。
美術鑑賞は、作品とのコミュニケーションでもあります。

企画展覧会だけでなく、美術館や博物館の常設展示ももちろんおすすめです。
特に国公立の施設には私たちの税金が投入されていますし、料金もお手頃です。
お気に入りの作品を見つけ、「ここに預けているんだ」という意識で楽しむのも一興ですよ。

ちなみに東京にある私のお気に入りの作品は、国立西洋美術館収蔵の「聖ミカエルと龍」。
ドラゴン退治は聖ジョージも有名ですが、よく見ればこの人物には翼がある。

この方は実は大天使ミカエルで、
「ミカエルが龍と闘い地上に落下させたという黙示録(第12章7-9節)に基づく場面」とのこと。
参考はこちら 
14世紀シエナ派の作家で、作家は諸説あり、まだ今後の研究がまたれるそうです。
わくわくします!

せっかくなので、この作品を少しだけ掘り下げてみます。
シエナはフィレンツェに近い、やはり中世~初期ルネサンス時代に力を持っていた美しい古都です。
この絵が描かれた頃以降のシエナは
ライバル都市フィレンツェとの領土争いに負け、
さらにペストで人口が1/3にまで落ち込み、都市としては衰退してしまいました。

こんなにも離れた時空に暮らす現在の私たちですが、
この2021年は15世紀の疫病の社会経済への影響をある程度明確に想像することができる、稀有な時期と言えるかもしれません。

14世紀シエナ派 聖ミカエルと龍 
テンペラ、板 40.5 x 19cm 国立西洋美術館蔵

ところで、聖書や古典、神話をモティーフとした絵画や彫刻は、
作家によって表現法や構図はもちろんのこと、
その物語の「切り取る瞬間」が違うことが多々あります。

このイタリアの14世紀の画家が描いたモティーフも、
15世紀末にドイツのデューラーが表現するとこのような感じです。


アルブレヒト・デューラー〈ヨハネ黙示録〉のうち《龍と闘う大天使ミカエル》 1498年
木版画 39×28cm 神奈川県立近代美術館蔵

激しいですね…。
このモティーフはなかなか強烈な物語です。

中世以降の重要な主題の一つですので、ご興味があればぜひ検索してみてください!
(さまざまな作品の画像が出てきますよ)

さらに深く知りたいのであれば、例えば以下のような切り口で調べていってはどうでしょうか。

・シエナやフィレンツェは当時なぜ力を持っていたのか
・14世紀の絵はなぜあのように硬い描き方なのか
・背景に金を使うのはなぜか
・なぜこの主題が重要だったのか
・誰がどのような目的でこれからの作品の作成依頼をしたのか
・デューラーはなぜ版画にしたのか
・これらの作品はどのような経緯で今の所蔵先にたどり着いたのか
・コレクションしている公共施設や企業は、なぜこれらを購入することにしたのか

本気でやると論文が書けてしまいますよ!

終わりに―

「コミュニケーションのseeds―ビジネスパーソンのための「美術鑑賞」 はじめの一歩―」と銘打って、
3回ブログを書かせていただきました。

いかがでしたでしょうか?

あくまでも一美術ファンとして、
ただただ楽しくおもしろく見ていただければいいと思いながら書きましたが、
敢えて「ビジネスパーソンのための」ということに焦点を絞るならば、
一番のポイントは、正解のないもの」「答えのわからないもの」に接する、向き合うことかなと思います。

世の中には「正解」が厳然とそびえたっている、
すべてのものには「それなりの正解」があるように感じられますが、
さて本当にそうなのかな?と思うことは大切な気がします。
自分なりの仮説」を立ててアプローチするのもおもしろそうです。

中にはアーティスト自身によって「正解」が語られる場合もありますし、アートも千差万別です。
いっそのことご自身で作成してみると、新しい扉を開けるかもしれませんね。

閉塞感ばかり感じてしまうような厳しい状況下に生きる私たちですが、
負けずに未知の扉を開けていきましょう!

人と人とのコミュニケーションにも、お仕事にも、
直接的間接的に効いてくること間違いなしです!

最後に、いつもと同じように
東京でこれからしばらく見られそうな展覧会の中から、いくつかセレクトしてみました。
(もちろん常設展だけを見るというのもお勧めですよ!)

一つでも二つでも、ご興味を引くものがあればうれしいです。

すてきな美術体験を!

ありがとうございました。

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また、コロナの関係でチケットが「事前予約のみ」の場合もありますので、ご注意ください。

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