日本のコミック市況と海外展開
― 海賊版と翻訳の課題
こんにちは、『鬼滅の刃』ブームに乗り遅れている営業企画部Sです。
『鬼滅の刃 無限城編・第1章』が大ヒットしている2025年。
『ドラゴンボール』の作者が亡くなった2024年には、世界各地で作者を追悼する光景が話題となりました。
さらに古くは、多くの世界的サッカー選手が、日本のアニメ『キャプテン翼』に影響を受けたことも知られています。
日本のアニメは世界に誇るエンタメの1つですね。
その影響力は、海外進出をにらむ日本の歌手がアニメ主題歌を狙うほど。国内外問わず大人気なのは、周知のとおりです。
そして、日本のアニメと並んで世界に影響を与えているのがコミックです。
本ブログでは、日本のコミック市場と海外展開の課題、そして翻訳会社として私たちがお役にたてることをまとめました。
日本のコミック市場:電子化で右肩上がり
日本国内でも、もちろんコミックの人気は底強く、
2014年から電子コミック売上も計上され、2017年からは各媒体あわせてコミック全体の売上も右肩上がりです。
引用 コミック販売額 | 出版科学研究所オンライン
電子コミックの伸びが市場全体を押し上げていますね。
政府は、このコミックを含めるエンタメコンテンツの海外進出を後押しする政策を掲げています。
2024年の記事ですが、下記を引用させていただきます。
政府のエンタメコンテンツ関連施策 (2024年2月22日 No.3626) | 週刊 経団連タイムス
■コンテンツ振興に向けた全体戦略と論点(内閣府)
内閣府の知的財産戦略推進事務局は、「知的財産推進計画2024」の策定にあわせ、新たなクールジャパン戦略(CJ戦略)について検討。
CJ戦略は近年、インバウンドの増加、農林水産品等の輸出の促進を中心として日本の魅力の発信に取り組んできたが、今後は、海外展開の推進と、クリエイター支援・構造改革等に注力。
また、コンテンツ分野の振興については、基幹産業としての成長を目指し、主にクリエイターの挑戦を促すために必要な環境整備(労働環境等の改善、コンプライアンスの遵守、適切な対価支払いの実現等)について検討。■ コンテンツ等の制作支援・ロケ誘致、海外展開支援(経産省)
応用事例の少ない新たなデジタル技術領域を活用した取り組みへの支援やコンテンツ制作・流通工程のデジタル化支援、映像作品の制作費支援、ロケ誘致やローカライズ・プロモーション支援を進める(Japan content localization and business transformation〈X〉、JLOX+補助金)。
デジタル等クリエイター人材創出事業と日本貿易振興機構(JETRO)海外拠点機能強化を進めていく。
前者は、突出したデジタルクリエイター人材の発掘に向け、制作面での技術的な伴走支援を行いつつ、成果発表の機会を設ける等により、強化を図る。
後者は、JETROの海外拠点にコンテンツ専門人材を配置し、海外現地でのクリエイターや企業に対する支援、現地マーケット等へのコアネットワーク構築を推進していく。コンテンツの海外展開を促進していくため、前年度に引き続き令和6年度も当初予算に計上し、国内で開催する国際イベントにおける日本コンテンツの発信の場の整備や、海賊版対策の推進、政府間対話に基づく共同制作などの国際連携を図っていく。■ クリエイター等の育成、海外への発信力強化(文化庁)
クリエイターを取り巻く課題は大きく三つ。
一つ目は、クリエイター等の挑戦機会やサポート環境、制作資金の不足がボトルネックとなり、優秀なクリエイター等が十分に成長と活躍の機会を得られていないこと。そこで、クリエイター等による企画から海外展開までの一体的な活動と、それら活動の発信の場である博物館、美術館、劇場等の文化施設の機能強化を、基金により弾力的かつ複数年度にわたって支援していく。
二つ目は、大きな国内市場が海外に展開するインセンティブを生じにくくしていることである。この解消に向け、将来活躍が期待される未来のトップアーティスト等の海外展開支援、文学作品、アニメ、マンガ等の翻訳家・批評家の育成、さらには文化芸術のデジタルアーカイブ化の拡充とその利活用を推進していく。
三つ目は、取引等の適正化とデジタルトランスフォーメーション(DX)時代への対応の必要性である。適正な契約関係構築に向けたガイドラインおよび契約書のひな型等を公表するとともに、文化芸術活動に関する法律相談窓口の運用の充実・強化に取り組む。同時に、著作物等の適法・円滑な利用に向けた新たな裁定制度の創設等、令和5年改正著作権法の円滑かつ確実な実施等を進め、文化と経済の好循環の実現を図っていく。
引用したように、内閣府・経産省・文化庁と3つの省庁が、支援施策を講じるほどエンタメ輸出は重要課題であると見なされています。
コミックの海外展開
日本のコミックは、とてもクオリティが高いのですが、
世界全体のメディア・コンテンツ市場と比較すると、その規模はまだまだ小さいようです。
●2023年の日本と世界のメディア・コンテンツ市場規模
アメリカとは大きく差があり、中国とも3倍ほどの差があるようです。
韓国は映画や音楽シーンで世界的ヒットに恵まれていますが、
意外に、市場規模的には日本と比べそれほど大きくないようです。
引用 HUMANMEDIA :: 日本と世界のメディア×コンテンツ市場データベース
●2023年の日本のコンテンツの海外売上は5兆7,769億円
海外売上は、というと2023年にはアニメと家庭用ゲーム(オンライン)が大きい伸びを見せました。
アニメよりも家庭用ゲーム(オンライン)の方がけん引役となっています。
●2012~23年の日本のコンテンツの海外売上の推移
引用 HUMANMEDIA :: 日本と世界のメディア×コンテンツ市場データベース
こちらのグラフを拝見すると、コンテンツの海外売上も好調に伸びているように見えます。
しかし、実はここには反映されていない売上があります。
よく知られる、海賊版によって棄損した売上です。
海賊版による日本コミック業界の逸失金額は、5000億円から1兆円を超える年もあると推定されています。
参照 文化庁 94002301_04.pdf
問題となる海賊版:ファン心理と業界の損失
そもそも、なぜ海賊版が生まれるのでしょうか。
無料でコミックを楽しみたいという負の面もありますが、
一方で 公式に翻訳されていないが熱狂的なファンの人が、どうしても海外の人にも知ってほしいというポジティブな動機で海賊版がつくられる事も多分にあるようです。
引用 海外マンガ市場における海賊版(Scanlation)の今|Mantra株式会社
参考 海賊版翻訳スキャンレーション文化:ファン熱意と著作権問題の多角的考察 | マンガディフィニションズ
そんな海賊版の状況に、非常にポジティブに対策されているのが
2019年から運営されている集英社さんの「MANGA Plus by SHUEISHA」という海外向けのコミック配信アプリです。
その狙いは「ジャンプという仕組み自体を全世界に対象を拡大し、更に新しい面白い漫画を世に届けたい」という事にあるようです。
一部引用
ジャンプ+編集部が海外向けに自ら漫画アプリを展開する理由|ジャンプ・デジタルラボ/少年ジャンプ+ (note.com)
英語、スペイン語、タイ語、インドネシア語、ポルトガル語、ロシア語、フランス語の7カ国語が 日本語版の発売と同時配信されるので、最新話が時間差なく楽しむことができます。
これが海賊版が生まれる理由の一つである“公式に翻訳されていないから”を解決しているのです。
翻訳会社がお役に立てること
では、現在 日本全体のどれくらいのコミックが翻訳されているのでしょう。
国内で出版されているコミック70万点(こんなにあるのですね)のうち、
今までに翻訳されている日本のコミックは1万4千冊程度にすぎません。
つまり、圧倒的に不足しているのです。
参照 SPECIAL | 株式会社オレンジ
これは、なんとしても早急に翻訳しなくては!
「機械翻訳+人手によるチェック(MTPE)」体制が必要だと思います。
コミックを機械の力で翻訳している企業も増えていますが、コミックは文芸作品です。
最終的には人のチェックが欠かせません。
小学館や集英社のアクセラレータープログラムに採択されている
Mantra株式会社 さん。
Mantra株式会社:マンガの超高精度な自動翻訳
小学館、経済産業省所管の産業革新投資機構(JIC)などが出資している
株式会社オレンジ さん。
株式会社オレンジ
いずれも「機械翻訳+人手によるチェック(MTPE)」体制を整えています。
私たち日本翻訳センターも、特に「チェック」の部分で力になれると考えています。
コミック作品を正しく、そして魅力的に世界へ届けるために、ぜひご相談ください。
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